十人十色

column vol.17できる力の土台となるもの

子どもが何かの力を獲得するためには、何事においても土台となる力が必要となります。例えば歩くことの場合、子どもは歩く練習をして歩けるようになるわけではありません。生まれたころから頭を持ち上げたり寝返りをしたり、ハイハイをしたりして、少しずつ身体の筋肉や平衡機能を自分の中で育てながら、最終的に歩くことができるようになります。

また、文字の読み書きでは、いきなり平仮名を書く練習を始めても、ことばの理解や表現などの土台となる力が育っていなければ文章の意味を読み取ることができず、文字は書けても作文が書けなかったりすることもあります。これでは本当の意味での文字の力が育ったとはいえません。

文字やことばはコミュニケーションツールの一つであり、自分の思いを誰かに伝えたいと思う意欲があり、それを分かりやすくことばで伝えられることが前提に成り立っています。

赤ちゃんのころは、泣くことで周りの大人に気持ちをくみ取ってもらい、自分の気持ちを理解してもらえた喜びを感じることで、ことばの学びが始まります。形だけ「できる」ようになるのではなく、本当の意味での「できる」力を培っていくためには、発達の道筋の中で土台となる力をしっかりと育てることが必要です。それは一朝一夕で可能になるものではありません。

子どもが経験する日々の生活や遊びの一つ一つにその要素は散りばめられています。毎日の生活の中で経験し、子どもは一生懸命に力を蓄えているのだということに気配りしながら、子どもの成長を見守っていきましょう。

文・臨床心理士

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