十人十色

column vol.18「間違い」と「違い」

人は皆、さまざまな個性を持ち、それぞれに合うやり方も違っています。そのことを分かりやすく教えてくれる「キツネと鶴のごちそう」というイソップ寓話があります。

-ある日、キツネは鶴を食事に招待しました。キツネは自分の飲みやすい平たいお皿にスープを入れ、おいしそうに飲みました。しかし、鶴は平たいお皿に入ったスープを飲めません。次の日、鶴はキツネを食事に招待しました。鶴は自分の飲みやすい細長い瓶に入ったスープをおいしそうに飲みました。しかし、キツネは細長い瓶に入ったスープを飲めません。-

お皿の形が合わなくて飲みたくても飲めなかったキツネと鶴のやり取りに、たとえ善意であったとしても自分に合う形が相手にも合うとは限らないということに気付かされます。個性の違いを理解し、それぞれに合わせたやり方を工夫できれば、きっとキツネと鶴は仲良くスープを飲めたことでしょう。

 この寓話のように、目に見える違いは分かりやすいですが、発達障害を抱える人の場合はどうでしょうか。その違いがはっきり見えないため、困っていることに気付きにくく、時には「怠けている」ように見えてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、「もしかしたら何かに困っているのかもしれない」と少し想像を巡らせてみてください。

そして、相手の個性を「間違い」と捉え、自分のやり方を押し付けるのではなく「違い」として受け止め、相手に合わせたやり方を工夫してみましょう。そんな理解と工夫が、みんなで楽しく過ごすための第一歩なのかもしれません。

文・臨床心理士

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